戸隠山
Date: 2002.7.6
Members: L.安藤
Area: 北信州
Type: 個人/一般
夜中の0:00頃都内を出発し、戸隠高原の無人ヒュッテに4:30頃着。パートナーは寝不足と体調不良のため小屋に残るので、これ幸いに目的地を高妻山から戸隠山へ変更する。
奥社入口から約2kmに及ぶ一直線の参道を奥社へと向かう。高原の朝。けたたましい鳥のさえずり。延々と続く巨木の参道はすれ違う人もなく、雰囲気は戸隠伝説の中に迷い込んだよう。奥社社務所のポストに計画書を提出。戸隠のシンボルでもある岩壁のカーテンが、すぐ真上に迫って展開している。
社務所の横から、いきなり滝の高巻きみたいに強引な急登の道をしばらく行くと、いよいよ岩壁基部に到着。右に五十間長屋を見て、鎖場は左の百間長屋へと続く。ハングの下をトラバースして西窟を見送ると、ルンゼ状の所にずっと上部から鎖が連続して垂れ下がっており、どうやら一般道はここを直登するらしい。グレードは悪くても3級程度。ちょうど丹沢のモミソ岩規模のピッチが、次々と出現して楽しい。鎖を掴んではつまらないので、三点支持で快適に登る。東京だとお巡りさんとのイタチごっこだけど、ここなら誰もいないし思う存分やれる。もしかしたら、今頃一ノ倉のテラスで順番待ちにイライラしているA君よりも、よっぽど山を楽しんじゃってるかも!などと思ってしまう。
ガンガン高度を稼ぎ、稜線まで指呼の間となったところで最後に水平リッジが現れる。「蟻の戸渡り」と「剣の刃渡り」だ。話には聞いていたが、実際これを見てさっさと引き返したくなった。何せ幅40cmの平均台が長さ約20mも続き、その間鎖も無い(ボルト有り)。右壁に沿って巻き道がある。蟻の戸渡りはこれを行くが、剣の刃渡りはイヤでもリッジを渡らなければならない。両側は鋭く切れ落ち、登山口の社務所がほぼ真下に見えるような目もくらむ状況で、オマケに強風だなんて勘弁してくれよ。指の間に冷や汗ダラダラかいて渡り終える。振り返ると戸隠高原から飯綱山を背景に物凄い高度感。これを下るとしたら、もっと快感にむせび泣くだろうなぁと思った。
渡りきった八方睨(はっぽうにらみ)は、文字通り360度の大展望。積雪期登攀で有名な戸隠本院岳や西岳がすぐ真横に。そして高曇りながらも富士山、甲斐駒、北岳、木曽御岳、八ヶ岳、槍穂、浅間山、谷川連峰、雨飾山、そして母なる山、白馬三山〜朝日岳まで間近に見えて、なぜか安心する。
なかでも印象的だったのが、悪名高い裾花川の源流を挟んで対峙する高妻山の優美なスカイライン。山深い位置にあるだけに不遇をかこっているが、この山の容姿には誰だって一目惚れするはず。こんな気持ちは南ア・笊ガ岳からの北岳遠望に続いて二度目だな。高妻山を森の奥に棲む「亜麻色の髪の乙女」と名付けた。
最近またヒットしはじめたそんな曲の鼻唄を歌いながら稜線を北上する。登山道は一瞬崖の上に出たり、西側樹林帯を巻いたりして、小さな上下を繰り返すのみで少々拍子抜け。戸隠山頂も判然としないまま、一不動のギャップへ下る。
一不動の避難小屋は思ったより快適そう。まだ時間も早く、普通なら山岳会員らしく一気に高妻山を目指すのだろうが、それをしないのが自分の長所(一般にこれを軟弱者とも呼ぶらしい)。あの山はいつか大切な亜麻色の髪の乙女と登りたくなったので、ここは欲張らずに下る(同時にきっと自分は一生、山を辞められないだろうと悟る・・・)。
戸隠牧場の草原は実に爽やか。広大で静かなキャンプ場でパンをかじっていたら眠くなってきた。そうか、夕べは一睡もしてなかった。草原で2時間も午睡ののち、旧越後道なる白樺林の素敵な小径を、遂に誰にも遭わずに独り占めして、フナのあらいと信州名物の桜肉が待つヒュッテへ向かった。
ロープを使って困難なクライミングに挑戦したがるのも良し。集会でロープワークを学ぶもまた良し。しかしロープは所詮、安全対策上の補助道具に過ぎない。せめて会のみんなが簡単な岩場くらいはロープに頼らず確実に三点支持で登り、そしてクライムダウン出来るようになれたら、もっとスピーディで多彩な山行が誰とでも組めるのになぁ。本当の安全って何だろう。ロープを出せば、或いは使えれば解決する問題じゃない気もするけどな。ま、いいか。
戸隠奥社入口5:55--百間長屋7:00--八方睨7:55〜8:10--九頭龍岳--8:50〜9:10--一不動避難小屋9:45〜10:15--戸隠牧場11:35〜14:10--越水ガ原(小屋)15:15