2002年度山のセルフレスキュー講座V
「冬山のセルフレスキュー」
主催:東京都山岳連盟 遭難対策委員会
2/18 机上講習(オリンピック記念青少年総合センター)
2/22−23 実技講習(谷川/土合山の家)
参加者:吉田法 加瀬 渡部
クラス1の講習内容(渡部)
雪山での服装
ビーコンは体の側面に着けたほうが良い。
背中に金属製のスコップをつけているとビーコンの電波が遮られる。
スコップは金属製で、裏面が平なものが良い。
出発前のビーコンチェック
山行出発前にリーダーがメンバーの送信を確認。
次にメンバー全員でリーダーの送信を確認する。
雪質観察(断面観察)
場所は30度前後、周りに木がなく人が踏み入れてないところが望ましい。
プローブで深さを測る(2m程度)
ブロック状に掘る。その場合地面まで掘る(地面が基準)。雪が深い場合は2m程度でも良い(雪面が基準)。
堀り終わったら面をスコップで下から上に削り、平らにする。
雪温計を10cm刻みにさして計測し記録する。雪温計・観察ルーペなど外気温に左右されるので、掘った直後に雪にさしておくと良い。
基準面から指を差していき、雪質がわかったところを印しておく。
観察ルーペでしめり気、雪質、固さ、つぶの大きさ、密度などを観察し記録しておく。
他に良くわかる方法として、着色液を断面に吹きかける(質の違う層が浮き出し見やすくなる)、バーナーで溶かしてみるなど。
弱層テスト
弱層テストはあくまで行動の判断材料のひとつにすぎない。弱層があるから雪崩れるというわけではない。上載積雪に目を向ける必要がある。
ハンドテスト
短時間で出来る。主観性大。
雪を30cmの円柱で70cm掘り、手前に引っ張る。
判断の目安・・・手首:危険、ひじ:やや危険、腰:安全
コンプレッションテスト
短時間で出来る。弱層が判別しやすい。
雪を30cm角のブロックに掘り、1面はスノーバーで切れ目を入れ、スコップを置きたたく。
判断の目安・・・手首:危険、ひじ:注意、肩:安全。
ハンドテストを行った後の断面でテストすると、より効果的な判断材料になる。
スクラムジャンプテスト
設定に時間がかかるので、実際の山行中には無理だろう。
深さ1m、奥行1.5m、横幅2mのブロックを掘り、1面はロープなどで切れ込みを入れる。
数人でスクラムを組み、面上でジャンブする。
判断材料・・・
乗っただけで崩れる:危険大(行動不可)
屈伸程度:危険(行動不可)
ライトジャンプ:行動に注意が必要
ヘビージャンプ:概ね安定
他、スキージャンプテストなどがある。
回数をこなし、自分なりの判断基準を確立する。
埋没体験
雪の中でどれだけ身動き出来るか、雪の中で発した声がどこまで聞こえるかを確認。
雪面から50〜60cm程度の人の入れる穴を掘る。
頭部には呼吸空間を作る。(今回は呼吸と会話用にホースを入れた)
底に銀マットなどをひき、埋没者はうつ伏せに寝る。
雪をかける。(30〜50cm)
プローブで捜索してみる。(感触が違う)
埋没者に声を出してもらうと、あまり外には聞こえないのがわかる。
*ブロービング・ビーコン・低体温症・凍傷についてはクラス2講習内容参照
*クラス1は残りの時間はひたすらいろいろなバリエーションのビーコン捜索を行った
クラス2の講習内容(吉田(法)、加瀬)
ビーコンについて
特性周波数は 457kHz で統一
SOS SB だけは受信二系統あり、スノーボードなどに取り付けた発信機にも対応する
SOS F1 ND は発信周期を少しずつずらす
(同機種が複数埋没したときでも、同期してしまわないように)
PIEPS 457 と ORTOVOX X1 以外であれば、どれも一長一短
習熟すればアナログ/デジタルどちらでも捜索所要時間は変わらない
アナログの方が受信距離が長い
(実測でアナログ 50〜60m・デジタル 30m)
雪崩によって流される距離は数百m〜1km にもなる
狭い範囲で捜索する分には、圧倒的にデジタルが早い
バーアンテナの数が 1つのものと 2つのものがある
1つのものは誘導法で埋没者に接近
2つのものは回路で埋没者の方向を計算する
AB1500 以外はアルカリ電池の使用を推奨しているが、実際はリチウム電池使用時の問題発生事例はない
掘り出した埋没者のビーコンは、二次雪崩に備え、OFF にはせずに、捜索モードにする
平均埋没深 = 1.2m (スコップで掘るのに 10分かかる)
プローブには、埋没深が分かるような印を付ける
プロービングは基本的に下流から上流へ
埋没者捜索〜発見〜搬送
雪面観察。遺留品や雪面に出ている人を探す。
二次雪崩を警戒しながらビーコン捜索開始。
場所を 2m 四方まで絞り込んだ人がいたら、他の人はプローブ・スコップを準備
プロービングで感触を得たらプローブは抜かず掘り出しにかかる
他の人は搬送路にトレースを作り、安全地帯に搬送用ツェルトやシュラフなどを準備
ツェルト・銀マット・マット・ザック・シュラフの順に敷く
埋没者を発見したら頭部を優先して掘り出し気道確保
声をかけながら体を掘り出す。ただし雪を 10cm 程度残しておく
損傷部位確認
他の人は搬出用にトレンチを掘る
ツェルトをかけてから最後の雪を取り除く (低体温症の可能性大)
ヒューマンチェーンを作り、合図で埋没者を持ち上げ、安全地帯へ運ぶ
頚椎損傷の可能性が高いので、頭に一人付き支える。声掛けも。
埋没者のハーネスにセルフを取り、シュラフに入れる
頭・首・腰・膝のところに緩衝材(雨具やフリース)を入れる
ブーツの靴紐を緩め、足元をフリースでくるむなどして保温
ツェルトを引っ張りつつ、足先・左右の膝・左右の肘・頭の 6箇所に
アンカー設置。アンカーはなるべく地面に近い位置に作る
アンカー同士を連結し、最後に補助ロープ(10m)で周囲を固める
アンカーに搬送時の取っ手となるスリングを付ける
肘左右・頭の三点から流動分散でメインロープを接続
流動分散は 6m 程度の輪で作る
搬送開始
持ち上げるときデイジーチェーンがあると便利
埋没者の体を屈曲させないよう注意する
他の人はテントやシェルターを作り、内部でお湯を沸かす
室内湿度を上げ、湯たんぽを作る
低体温症/凍傷
コア=重要臓器 37℃(深部温度)
低体温症は行動開始から 3〜5時間後に発症
人間は、吸った空気が肺に届くまでの間に湿度を 100% まで上げる。これには大量のエネルギーが必要
「ふるえ」は大量のエネルギーが必要
ダウンシュラフなどは、それ自体は発熱しない
他のメンバがシュラフに入るなどして暖める
雪上アンカー
土嚢袋アンカー
スノーボラート
太い枝を使ったアンカー
踏み固めても 30cm の深さまでしか固まらない
1/2 プルアップシステム
タイブロック
カラビナはロープを内側に入れる向きでセットする
オーバル環にセットすると簡単にストッパーとして使える(プルアップ時に有効)
感想
吉田(法)
ひょんなことから耳にした「たま」の「電車かもしれない」が頭から離れず、今回ずっと頭の中をグルグル回ってた。昨年とカリキュラムを変更 し、クラス1 (雪崩回避)とクラス2(雪崩発生後)に分けたため、詰め込み学習っぽさは無くなった。二回目ということもあり、かなりの部分を習得できたと思う。せっか くなので、機会を作って会にフィードバックしたいと思う。
加瀬
主な講習内容
ビーコンの操作方法
実際にビーコンを使っての捜索
低体温症についての講義(机上)
事故者の引き上げ、引き下ろし、梱包
ビーコン捜索に求められるのは、速さだと思った。なぜなら、ビーコンで埋没者を発見したあと、掘り出す時間を確保しなければならないからだ。実際に1メー トル程に埋まっている人形を掘り出してみた。結構時間がかかった。埋没者が雪の中で生きていることのできる時間は15分程。講師が、捜索に5分、掘り出し に10分と言った意味を実感した。埋没者を捜索するとき、自分も雪崩の危険に遭うということを頭に入れておく必要があると思った。その意味でもやはり捜索 には速さが大切だと思った。
事故者の引き上げ・引き下ろし・梱包の訓練について、自分の場合、基本的な岩登りの技術やロープワークを身に付けてなかったので、理解できないところが多 かった。そのため、普段から最低限のロープワークは身に付けておこうと思う。
講習を終えて、自分の身は自分で守らなければならない。危険は常に身近にいる。このことを頭に入れて山に登ろうと思う。山に登るからには、何らかの事故・ 遭難は避けられない。大切なのは、アクシデントの結果を問うことではなく、結果に至るまで、生きる手段をさがしたかどうかである。何の本に書いてあったか は忘nれたが、人は危機に直面したとき普段やっていることしかできないという。言いかえれば、知らなけれnnば何もできずにただ結果をむかえるだけであ る。けれ ども、n知っていれば少なくとも生きる術をさがすことはできる。自分は後者を選びたい。それができれば、セルフレスキュー講習が初めて生きていくものとな る だろう。
渡部
今回2クラスになって助かったというのが実感としてある。クラス1は雪の断面観察、弱層テスト、ビーコン捜索を徹底して行う。初めて聞く内容 でなかったと いう事もあるが、じっくり行なえたので、かなり理解が出来た。来年はクラス2を受けたいと思う。今期は「搬送法」「岩場のセルフレスキュー」「雪山のセル フレスキュー」と一通り受けたが、もしこれらの内容に興味を持った人には3つ通して受ける事をお勧めする。単独で受けるよりもわかりやすいと思う。それに しても今回もおそろしく激しい懇親会だった。