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入川谷本谷

Date: 2003.9.6
Members: L.吉田(法)、安藤
Area: 奥多摩
Type: 沢/個人

古里駅から、採石場に出入りするダンプの脇を歩いて、武甲山のようにエグ れた山肌を見上げながら入渓点へ向かう。林道終点はちょっとした広場になっている。

入渓点からイキナリのゴルジュ。ヘツって小さな滝をいくつか越える。この後すぐに伏流となる。水が戻ってきたあたりから、いかにも魚がいそうな感じになっ てきたので、竿を出しながら遡行。でも結局 10cm ぐらいの稚魚がかかっただけ。魚影も少ない。もうあらかた釣り荒らされてしまった後なのか。

12:00 になって竿をしまい、真面目に遡行開始。F1・F2 ともに垂直以上で、大きな釜を持つ立派な滝だ。どちらも巻いた。

次の F3〜F4 は更に大きい。親子二人のPが F4速滝の高巻きに取り付いているようだ。簡易ハーネスをつけてから、左の岩場から巻いて F4速滝下へ出る。左の高巻きルートを見上げると、オッサンが壁の途中で立ち往生。彼の子供
(小学校低学年ぐらい)の方は登り切ってしまっている。しばらく様子を見るが、どうにもならないようなので、ロープを出して吉田(法)リードで登る。オッ サンの脇を登り、40m ほど出して FIX する。確かに悪い。親子に先に行ってもらい、安藤さんが続く。そのままツルベで安藤さんリード。乾いたスラブとなるが、沢靴のフェルトは全然フリクション が利かない。40m ほど。次は F4 落ち口に向かってトラバース2ピッチ。そして懸垂 20m で、やっと沢に戻る。

あとは適当に登って、しっかりした作業道を見つけて、そこで遡行終了とする。安藤さんが担ぎ上げてくれたビールで九十九祭りのリハ。お疲れ様。遅刻は免れ ないが、あんまり遅くならないように鳩ノ巣へ駆け下る。あの後、親子がど
うなったのか、それが気がかり。

JR青梅線古里駅8:40-入渓点9:40-布滝沢出合(?)12:00 -F3取付き 13:30-F4速滝落ち口14:30-遡行終了15:30-鳩ノ巣バンガロー17:00

後ろの明るい所が入渓点。
いきなりのゴルジュ。


竿を振るが、
アタリは無い。

感想

安藤
映画「スタンド・バイ・ミー」に似た少年期の体験談は、少なからず誰にでもあると思 う。
今回ヨシダ君に計画を持ちかけられて「どれどれ?」と奥多摩の地図を眺めていたら、入川谷の脇にある「大根の山の神」という地名に行き当たり、しばし目を 止めてしまった。
そこは僕が小学6年生の時、同級生のO君と川苔山に登って鳩ノ巣へ下る途中、産まれて初めて山でウンチをした想い出の場所だったからだ。生粋の都会っ子と しては、野外でお尻を出すという行為が人間にとって最も無防備な刹那のひとつであり、その時間帯がものすごく遅々として不安でもどかしいことを思い知らさ れた。
何はともあれ無事にコトを済ませたのちのこと。小さな社と御神木の鎮座するその「山の神」の前でふと地図を見ると、巻き道を少し戻った所から登山道と別れ て、入川谷の方へ続く小径の存在を発見した。どうやら「峰」という名の集落に続いているらしい。車も入れないし電気も通じてなさそうなこんな山奥に村があ るのか...。どんな人が住んでいるんだろう...。分岐には道標もあったので、僕らは興味津々その集落の探検に向かった。
...までは良かったが、小径をものの50mと進まぬうちにどちらともなく歩みを止めたかと思いきや、突然きびすを返して我先にと、お互い相手の肩口をヤ ブこぎよろしく掴んでは掻き分ける要領で、競うようにして正規の登山道まで走って逃げ帰ってしまったのだった。(たいへん失礼ながら)その集落がもしも鬼 婆や妖怪の巣窟だったら、二度と生きては帰れまい......と思い込んでしまったんだろう。

今回はもともと釣り竿片手の回遊魚的山行計画だったから、今では廃墟になったと聞くその峰集落の跡に是非とも立ち寄りたかったが、「速滝」なる名瀑の高巻 き(と言うより立派な登攀)で予想以上にルートファインディングを楽しみ過ぎてしまい、結局九十九祭の開始時間を優先せざるを得なかった(パートナーがヨ シダ君だったので、まだあの時間で済んだのだと思う)。
それでも至る所にワサビ田の跡もあって、谷筋を縦横に走る仕事道はきっと集落の人々の貴重な生活道にもなっていたに違いない。ともすれば排他的に映る隔絶 されたこの谷間の"聖域"で、どういう人々がどういう想いでどんな生活をしていたのだろうか。そして山を降りる決断をするまでにはどんな葛藤があったのだ ろうか。想像は尽きない。平地の極端に少ない奥多摩には、他にもこういうところがまだまだいっぱいあるはずだ(奥武蔵の冠岩集落跡も山奥だった)。
こうした興味を持ち合わせていると、沢登りやヤブ尾根のトレースが更に一枚充実したものとなろうし、少なくともかつてしきりに行われてきた「地域研究」の 類には必須の眼目だったと言える。
次こそは一寸時間を作って、谷あいのその小さな時空の狭間へ自ら迷い込んでみたいものだ(ちなみに今回も「大根の山の神」で小用を足したが、そこには林道 が延びて来ていた)。

さて、エゴむき出しで遁走劇を競演したかのO君とは昨夏、同級生の御母堂の通夜でバッタリ出くわした。高校時代に雲取山へ同行して以来だからかなり久し い。現在は有給休暇を存分に使って、子宝に恵まれなかったぶんご夫婦で趣味の山岳写真を撮っているとの由。その通夜の晩も翌日から北アルプスに4〜5日出 掛けるとかで、お清めの盃で旧交を深め合うそばから、携帯電話で夫人との打ち合わせに余念がない様は実に微笑ましかった。現在進行形で「今の山」を語り合 える旧友に再会できた嬉しさもさることながら、なんとも爽やかにいたわり合って伴侶と2人きりの生活を謳歌するその姿を見て、嫉妬や羨望どころか僕もなぜ か素直に幸せを分けていただいたような、そんなすがすがしい気分になれたのだった。

吉田(法)
沢自体は、苔生す奥多摩らしい綺麗な渓相。何mもの滝をシャワークライムするようなと ころは無いが、前述のようにF3/F4の高巻きだけしょっぱい。予想外に手間がかかった。でも、期せずして安藤さんとザイルを組むことができたし、しかも 本チャンちっくな手応えのあるクライミングとなって充実した。[nattoclub] で募集した時点では正直「なんだ安藤さんと二人だけか」と思ったが、実際のところ安藤さんと二人だけで助かった。メジャーな本チャンルートと比べると、 やっぱり沢登りの方が不確定要素が多く、総合力を試されるような気がする。同じ3級なら沢の方が難しいと思う。