甲斐駒ケ岳 赤石沢Aフランケ 赤蜘蛛ルート

Date: 2003.12.27-30
Members: L.橋口、吉田(法)、勝山
Area: 南ア
Type: 合宿/バリ

<<前夜>>
当初、20:00の集合はメンバーの都合で20:30集合になった。 20:30車をスバルビル前につけると、橋口はすでにいた。吉田(法)は車と同時に到着した。今回は、テントをベースに行動するので軽量化の必要がないた め、皆とてもザックがでかい。おそらく30キロは越しているだろう。一度、ザックをおろすとバーベルでも担ぎ上げるような力が必要になる。とにかく、出 発。順調に飛ばす。永福から高速に乗る。ガソリンは少ないことに気づいたのはその後だった。大丈夫かなあ思いつつ、ガソリンスタンドのある談合坂まで無事 到着。運転手、橋口に交代。須玉インターで高速を降り、竹宇へ着く。雪が一センチほど積もっていた。寝る。

新宿スバルビル前集合20:30--竹宇神社駐車場着23:30頃
 
<<27日>>
翌日、5時半ごろ起床。勝山のみ、ガスでパスタを沸かし食う。このため、 出発時間は少し遅れたかも。7時ごろ、出発。

快調にのぼるが、やはり、先週で八ヶ岳で使い込んで痛めてしまった右のももの付け根の筋肉と筋が痛い。このため、早々にばてる。7合目直前、ばてたことを 宣言。皆に先に行ってもらう。橋口と吉田(法)は先に行ってテントを張る。勝山は一度、遅れ始めると、こころの歯止めをなくし、ちょっと歩いては休むこと を繰り返す。周囲は、吹雪状態だが、ばてていることの方が気になる。

16時ごろ八合目。しかし、高度計は2830Mを指している。高度計の異常な計測結果にあせりを感じ、地図を見、笛を吹く。しかし、しばらくは何の反応も ない。どうしようか逡巡していると、手を振るパーティーメンバーを発見。よかったぁと思う。テントに着くと、橋口と吉田(法)は翌日のアプローチの偵察に 出る。

積雪があり、踏み跡はよく分からないので、何となく尾根伝いにくだっていく。所々、赤テープがあるので、慎重に下れば問題ないだろう。時間があまりないた め、八丈沢にトラバースする地点を確認したところで偵察を終える。

勝山にはその余力はなく。「勝山さんは、テントの中で水でも作っといてください」との仰せをありがたく受け取り、せっせと水作りにいそしむ。途中、水をこ ぼしたりしながらも何とか3・5リットルほど水を作ったところで、偵察隊到着。17:00頃。しばし、茶を飲み、夕食作りへ。当番は勝山。メニューは最近 仕入れた知識を元に考案した夢の栄養バランスのメニュー。炭水化物、良質の植物性たんぱく質とそれを消化しエネルギーに変えるビタミン、ミネラルをバラン スよく含んだメニューだ。しかも味もよかった。

起床05:30--出発07:00--五合目小屋着13:00--八合目 着15:00--勝山八合目着、橋口/吉田(法)アプローチ偵察に出発。勝山水作り17:00--橋口/吉田(法)帰幕--18:00夕食--19:30 就寝

<<28日>>
翌日4時、起床。天気はいいようだ。朝食担当は勝山、アタック直前の重要 な朝食は明太子パスタとコーンスープ。もち入りのはずだったが入れ忘れてしまった。パスタは割りと腹持ちがいいと判断したのだが。どうだったのだろうか。 05:30テントの外に出る。東の彼方、下界の町の灯が美しい。しっかりしたふみ跡を下る。最初、大岩の間を降り、ハーケンの打たれた丸太を下る。勝山の 足ははや、疲れ始める。右足の調子は相変わらず悪い。このころ、朝日の輝きが雪面を赤く染め始める。美しい。その後、フィックスの下降のあと、ロープを出 して懸垂。また、フィックスの下降などを繰り返し7時ごろ、取り付き着。Aフランケの左側の斜面はモルゲンロートに染まっている。山肌の雪のひだ一つ一つ が赤く染まり、芸術的で、言葉を失うほど美しい。取り付き直前、便意をもよおす。昨晩の考えつくしたメニューの栄養のバランスは便を少量しか生まないは ず、この便意はその前の食事によるものだろう。そんなこともあり、7:30取り付き開始。

前日積雪があり、壁の状態を考えると時間がかかることも考えられ、下部白稜会〜上部赤蜘蛛に繋げることも考えたが、各ルートの簡単な部分を繋げた、単調な 人工ルートとなり面白くないので、兎にも角にも赤蜘蛛に取り付くことにする。大テラスまでは橋口リード、吉田(法)、勝山フォロー。

1P出だしの小ハングを越え、単調なアブミの掛け替えを行う。終了点の近くが、テラスの雪で埋まっており、テラスに上がるのに少々とまどう。クラックに キャメをかまし乗り込んだあと、チョンボ棒を終了点のシュリンゲにかけてテラスに入り込む。チョンボ棒がないと、不安定な雪壁にピッケルをつっこんで乗り 込むか、雪を払いのけてつっこむ必要がある。
7:30リード開始
8:30フォロー開始
(勝山)出だしのハングはやや手こずる。ピッチ終了直前はボルトなく、雪のついた斜面のフリーはリードだと厳しそうだ。橋口さんがたらしたアブミを遠慮な く使わせてもらう。

2P大ジェードル
左上するジェードルを直上していく。夏は5級のピッチだが、スタンスをクラックに求めることも多いので、アイゼンではかなり厳しい。昨日の雪も結構ルート 上にある。しかし、基本的にカムをクラックに噛ましていけるので、大きな問題はない。ただ、25mほど登った後のビレイ点を通過しさらに直上してしまった ので、手持ちのギアが少なくなり苦労した。すなおに、短くピッチを切るべきだった。
9:00リード開始
(勝山)ビレイしていて途中から橋口さんが見えなくなる。時折、テンションの掛け声がかかり、どんなに難しいところなのか想像が広がる。
10:30フォロー開始
(勝山)アックスによるドライトゥーリングなどを併用して登る。雪が冷たい。40メートルはある。

3P大ジェードルの残り、2ピッチ目にこのピッチを少し登っているので、短かい。単調なボルトラダー。
11:00リード開始
11:30フォロー開始

4PV字ハング このピッチは、冬の赤蜘蛛の記録を見るとかなり苦労しているので緊張する。ハングを越えるまでは、単調なアブミの掛け替えで、夏と変わら ないので気が楽。ハングを越えると、スラブにのっぺりと雪が乗ったところに出くわす。初めはどうして良いか分からなかったが、リスにピンを打ち込みそれに 乗り込んだ後、一気に上部のスタンスに立ち込む。その後は、スラブに乗った雪をダマシダマシ踏み固めスタンスとし、クラック内にアックスをたたき込み何と かはい上がる。その後は、プロテクションは5mおき位にしか取れないが、まあ、簡単な草付きを登っていき大テラスへ。赤蜘蛛で唯一と言っても良い冬壁ぽい ピッチ。
12:00リード開始
13:15フォロー開始、勝山ここでアブミ一個落とす。予備を使う。まったく慎重さが足りない。

大テラス着14:00
このまま行くと壷にはまると判断し、大テラスにツエルト設営。茶を飲み、時間をつぶす。なかなかこんなみはらしのいいところにとまることもないだろう。真 下は何百メートルも切れ落ち、右側は、Aフランケの左側の壁、向かいは雪壁。左側は富士山まで続く展望。夕食は、カレーヌードル。回し食い。寝る。勝山 は、二人の間に入って寝たため割合寒さは感じなかったが、両側の二人は相当の寒さだったようだ。吉田(法)は風邪まで引いてしまった。

起床、朝食04:00--出発05:40--取り付き07:00--登攀 開始07:30--大テラス着13:45

<<29日>>
04:15起床、朝食、お茶。
07:30取り付き
勝山リード、橋口、吉田さんフォロー。

5P、凹角を二つ越え、フリーでリッジ状を登る。
07:30リード開始(勝山)この冬、初めてのリードで慎重にん登りすぎたかもしれない。凹角は傾斜もゆるく、どんどん行けばよかったかも、ただ、リベッ トハンガーをセットするときは緊張した。後半はフリー難しくはない。
08:30フォロー開始

6P、この日、核心のピッチ、スーパークラックを直上する。みると、ずっとボルトが続いていて、40メートルほど上に緑色のスリングが見える。どうやらあ れが、ピッチ終了点であるようだ。
09:00リード開始
(勝山)もう絶対アブミを落としてはならない。また、ひとつのミスも絶対犯さしてはいけない。一度ミスを犯すと歯止めがなくなるから絶対ミスはおかすなと 自分に言い聞かせて登り始める。慎重に、アジャスタブルデイジーを使って登る。当初は怖くてアブミの最上段に乗れない。スタートから三つ目ぐらいのボルト が異様に遠く、いわゆるちょんぼ棒を使う。その後は、遠いなあと思うところは、カムをセットして登る。半分以上過ぎたところで、スリング・カラビナともに 底をつきかけて、もうピッチを切ろうかと思うが、ビレイヤーに「なんとかやってくれ」と励まされてプロテクションを間引きして節約しつつ登る。カムのセッ トが意外と高さを稼げない。最上段に乗ってカムをセットするというのが、体が安定しないため、難しいからだ。そのためアブミ二段目に立ってからカムセット になり、今ひとつ効率的でない。アブミ最上段にたちこんで、ハンドジャムを使ってカムをセットできれば、少し時間を節約できたかもしれない。途中の残置ス ノーバーみたいなのに着いたぼろいテープスリングに体重をかけるのがこのピッチでもっとも怖かった瞬間だった。スノーバーのテープスリングにA0してカム をセットしたほうがよかったかもしれない。結局二時間かかった。ハンギングビレイ。ビレイ点はボルト三個。そのうちの一番右はかなりひびが入っている。一 番右のも少しひびが入っている。少し残業して、次のピッチの最初のボルトまでロープを伸ばしたほうがよかったかもしれない。
11:00フォロー開始

7Pカンテを回り込んでスラブ上を人工で登る。最後は若干のフリー。
11:50リード開始
直前のピッチに比べると快調。カンテを回り込むところの高度感はすごい、ヨセミテもかくやと思わせる。アブミは大体、二段目にたちこんでフィフィが届く。 ただ、回り込んで、木をすぎるあたりで、残置スリングにA0して最上段にたちこんだり、スラブ上で、スラブのホールドをつかんで、最上段に都合三回ほど立 ちこんだ。恐怖感は、直前のピッチほどではない。木は上になるほど折れそう。また、ボルトは信用できた。
12:50フォロー開始

8P
13:15リード開始
岩を左から回り込まず、右からスラブに出て登るのが正解のようだ。僕は左の方にあるボルトにだまされて行くと、難しいフリーをする羽目になる。おまけに ロープも屈曲して重くなる。ボルトの人工は直前のピッチの終了間際と同じような感じ。
14:15フォロー開始

9P
14:55リード開始
露岩とブッシュの木登り。ロープは必要だ。途中じゃまになったカムをセットしてA0して登った。
15:25フォロー開始
15:50ロープ解除

少し歩くとAフランケ頭の岩小屋に出た。ほんの10メートルぐらいであろうか。岩小屋の左を登り、松の間の傾斜のない雪面を歩くと下降路であるトレースと 合流する。トレースに沿って登ることおよそ30分強。16:30ごろ、八合目テントサイト着。疲れ果て、簡単に道具を仕舞い、テントに中に入る。テントの 中は前夜のビバークと違い本当に天国だった。暖かい。お茶やココアなどを飲む。ここで、明日どうするという話になり、明日はやめて下山しようということに なる。飯は、二日分を食べる。吉田(法)の野菜カレーマカロニとサラダ、橋口のマッシュポテト、勝山の棒ラーメン。いろいろ食って寝る。

起床、朝食04:15--登攀開始07:30--16:30八合目テント サイト着

<<30日>>
05:30起床のはずが、06:00前に起床。橋口さんのそばを食べる。 07:30?ごろ出発。ところどころ休みながら、11:30ごろ、駐車場着。勝山は竹宇神社に参り、神社の水を口にする。その後、道の駅・蔦木宿の風呂 「蔦の湯」に入る。いい風呂だった。水風呂に浸かった。その後、食事をしに、八ヶ岳リゾートアウトレットへ行きたいという勝山の希望をみんなに聞き入れて もらう。そこで、ファーストフード的なもの食べ、アウトドアのアウトレットを物色し、結局何も買わずに帰り、小淵沢駅で解散する。15:15。

起床06:00前--出発07:30--駐車場11:30--解散15: 15


感想

勝山
アプローチですぐばてる、またアブミを落とすなどいろいろ不注意もあった 僕を助けてリードまでできて、吉田さん、橋口さん、どうもありがとうございました。今度は、吉田さんリードで、どこか行きましょうね。また、ビバーク中、 寒さは真ん中に入らせてもらって本当に助かりました。おかげで自分では気づかなかったけどうとうとできたようです。吉田さんは寒くて風邪を引いたというの に本当に助かりました。こんなに長いルートの冬のリードはやはり緊張します。

吉田(法)
今回で九十九の冬合宿も三回目、早いものだ。しかし今年も冬合宿前に仕事 がドタバタした。慌てて準備して出発したものの、致命的な忘れ物が無くて本当に良かった。いつになったら落ち着くのだろう?

それは兎も角、Aフランケ赤蜘蛛は、というか、赤石沢の壁は圧倒される。難しいアプローチの下降の末、やっとの思いで取り付きにたどり着いて、見上げると 朝日を受けて金色に輝く壁。写真で伝わるか、その美しさ。

今回オールフォローだからスピードアップを第一に考えてガンガン飛ばしたつもり。傾斜も 90度を越えるところは少なく装備も軽いので、アジャスタブルデイジーの出番も少なく、アブミを巻き込む回数も少ない。フォローした印象としては、大テラ スまでの前半の方が突破力を必要とするゲリラ的な要素が多く、後半は純粋にクライミングに集中できる爽快ピッチが多いような感じを受けた。特に恐竜カンテ を回り込むところは爽快!

そして冬壁ビヴァーク。暗くなるまでは快適そうだったけど、やっぱり寒い。芯まで冷えて、さらに翌日寒風に耐えてビレイしていたものだから風邪をこじらせ た。朝よぉく身体を動かして暖めておけば良かったかもしれない。橋口さんと勝山さんはケロッとしている。新兵器としてミズノのブレスサーモ素材の目出帽と 中間着を導入し防寒対策としたが、確かに効果はあるような気がするものの、冬壁ビヴァークには十分ではなかったようだ。

帰幕後、風邪をひいたことがハッキリしたので、翌日からの行程は留守番を申し出たが、これがPの士気を下げることになってしまったようで申し訳なかった。 言い出すタイミングを間違えたようだ。他に反省すべき点としては、朝の準備の時間。無駄な動きが多いのかと思っていたが、どうやらそもそも動いていない時 間が多いような気がしてきた。起きたらテキパキ常に動こう。

橋口
当初、一日で壁を抜けられるかなと思っていたけど甘かった。シュラフ無し でつっこんだが、そんなに重いものでもないので持っていくべきだったかも。それと、登攀一日目の終了時間は結構早かったので、1−2ピッチFixしても良 かったような気がする。しかし、丸山東壁のユマールが少々トラウマになっていたのだ。全体としては、計画がかなり一杯一杯だったので、結果が中途半端に なってしまったのだと思う。戸台方面へ抜ける計画だったら、適当にアイスも楽しめ良かったのかもしれない。

赤蜘蛛自体は基本的に夏と状態が変わらず、感覚的にはアイゼン岩トレをしているようで、なんか緊迫感がなかった。でも、登るスピードはのろい。もっと早く しなくては。でも、改めて他の記録を見ていると、みんな同じようにのろい感じだったので、そんなもんなのかな。


ルート図 (C)勝山


赤石沢の壁


2P 大ジェードル


大テラスでビヴァーク


5P


6P


6P